ポビーとディンガン

ポビーとディンガン文化人や書店員の圧倒的な支持と口コミで、日本でも10万部を超えるベストセラーになった同名小説を映画化したという『ポビーとディンガン』を鑑賞。
舞台は世界的なオパールの採掘地として知られる、オーストラリアの田舎町ライトニングリッジ。一攫千金を狙って移り住む「余所者」の寄せ集めでできているような田舎町。「アタリ」の鉱脈をめぐって小さな諍いが耐えない。
主人公の11歳の少年アシュモルの父もそんなひとり。まだ一山当ててはいないけれどそんな日を信じて鉱山に出かける父を格好いいと信頼し尊敬している。実際の暮らしは苦しかったけれどそれでも彼にとっては幸せな日々であった。たったひとつの悩みといえば妹ケリーアンが空想上の二人の友達「ポビー」と「ティンガン」に夢中なこと。他に友達を作ろうともしない彼女に業を煮やし、家族は一計を案じるが、かえって騒動を巻き起こすこととなる。

その一計とは二人をケリーアンと別行動をさせること。ケリーアンも合意し、試みは成功したかに見えたが、今度は「二人がいなくなってしまった!」と大騒ぎ。見えない友人の捜索が始まったが、とうてい周りの人に認めてもらえるはずもなく、家族ごと町で孤立してしまい、しかもそのショックからケリーアンは原因不明の病に陥ってしまう。
日に日に衰弱する妹を見て、アシュモルはポビーとディンガンは実在するとかしないとかは関係なく、(彼女にとっては)本当の現実だったのだと気づき、行動を起こす。妹が元気になるにはなんとしても二人を見つけ出さなければいけないと。
一見ファンタジックな子供の物語のように見えて、かなりシビアな内容。
宝の眠る鉱山の町ではオトナたちがいきり立って周りを出し抜いて一山当てることばかりを考え、そのオトナ(父親)の成功=子供(あるいは妻)の力関係でもある。そんな場所でのケリーアンの「ふたりのおともだち失踪事件」から巻き起こる濡れ衣事件は、町中からの嫌がらせや差別行為に発展、家族は窮地に追い込んでいく。誤解からおこる偏見の怖さを見せつける。その悲惨さに気持ちも荒んでいく。
それでも妹思いの11歳の男の子の行動により頑なな町の人々の気持ちが動いていくにつれ、ほんわかとした感動がおきてくる。彼の行動によって町の人々も鉱脈をめぐる日常のストレスから少し解放されたかのようにも見えた。

1件のコメント

  1. はじめまして。
    映画を観て興味を持ち、原作本を読んでさらに感動。
    原作には映画では描ききれなかったたくさんの物語がありました。出会う準場が逆でなくてよかった。(^-^)
    原作本は、日本で10万部を超えるベストセラーだったんですね。納得です。そう言えば、当時たくさん本屋さんで平積みになっていたのを思い出しました。

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