フリーライターの陽子は、古書店主人の肇と親しく一緒に過ごすことが多い。ある日、陽子が妊娠していることが分かる。相手は台湾の男性らしい。陽子の両親は「シングルマザー」の道を選ぼうとする娘を心配する。一方、陽子を好きな肇は、自分の気持ちを伝えられない。過ぎゆく日々の中で陽子は想う—- 家族のこと、肇のこと、これから生まれてくる新しい命のことを…。
とにかく画がキレイ、とかく騒がしいイメージのありがちな東京でも情緒が残る下町の「絵になる」場所を雰囲気よく映し出す。キャストもみんないい感じでとても自然で。(やはり固まった脚本はなく、即興演出もあったとのこと)
でも、何かが足りない。なんだろうと考えたら小津作品でいうところの「杉村春子(スパイス)」がいないのだ。時には狂言回しにもなりうる人間くさいキャラ。
もちろんこの作品は「小津監督にオマージュ」なだけで侯孝賢作品なので違って当然なわけだけれど。前作『ミレニアム・マンボ』のときにはあったナマナマしさがちょっとあっても良かったような気がする。