雪降る故郷の澄んだ空気と人々が教えてくれたこと。
東京での八年続いた愛人生活が終わりを迎え、雪降るふるさとに帰ったほたる。そこで彼女を待ち受けていたのは、変わらない川の流れと懐かしくも愛しい人々の優しさだった。失ったもの、忘れていた大切なものを彼女はゆっくりととりもどしていく――。特別で平凡な「癒し」を描いた静かな回復の物語。
久々に(吉本ばなな改め)よしもとばななを読んだ。
「忘れかけてたこの感じ」というのが、まさにピッタリな、ゆったり感。
ここのところ切迫した忙しさがあったわけでもないのに一人で「ああ、あれもやらなきゃこれもやらなきゃ、時間がない、時間がない」とせわしなく思いこんでいた気持ちがあって、それをすぅっとリセットしてくれたような気がする。
主人公ほたるの故郷はつまんない地方都市の郊外という印象。それでも都会で自分の幸せとか楽しみばかり追いかけて(あるいは待ち続けて)いた彼女にはちょっと立ち止まって周りを見るにはちょうどいい落ち着ける場所になった。
信じていたもの、あてにしていたものが無くなっても居場所がある幸せ。彼女はまたゆっくりと再生していく。