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ランド・オブ・プレンティ

ヴェンダースの新作『ランド・オブ・プレンティ』を鑑賞。
アメリカで生まれ、アフリカ?イスラエルで育ったラナ。母から預かった手紙を母の兄である伯父ポールに届けるためにアメリカへ渡る。所在もわからないまま。LAの伝道所でボランティアを始め、のめりこんでゆく。
一方ポールはベトナム戦争の後遺症や「9.11」のトラウマに苛まれ、妄想から「誇り高き自由の地アメリカ」を必死に1人で守ろうと街中を警備し、警戒を続けている。アラブ系男性を見つけては「怪しい」と尾行する日々。
ロスのダウンタウンの伝道所で遭遇した2人は、1人のアラブ系男性のホームレスが銃撃される現場に居合わせる。その男の死をきっかけに、2人は死んだ男性の兄が住む町、カリフォルニア州トロナに向かう。ポールは事件の真相を知るために、ラナは遺体を兄に届けるために。

最果ての地トロナでやっと現実に目を向け、受け入れることができるようになるポール。そしてNYへ向かう二人。ポールはその現実を確認するべく、ラナは母国アメリカの姿を見るために。
ヴェンダースといえばやはり「ロード・ムービー」。本作でもホームレスがあふれる街LAのダウンダウン?荒涼とした渇いた土地トロナ?9.11のテロ攻撃に遭った街NY「グラウンド・ゼロ」へと渡っていく。それぞれまったく違った顔を見せる街だけれど、すべてがアメリカ。
アメリカ人でありながら「外」がスタンダードになってしまったラナとアメリカ人である故にいくつものトラウマを抱えることになったポール、理由も無く襲撃されて殺されてしまったアラブ系男性、その兄、それぞれ「9.11」以降のアメリカの現在の象徴めいた登場人物たち。
「グラウンド・ゼロ」を目の当たりにした二人が感じた「特別じゃない感」、というのもやはり現実なのだろう。特別なはずなのにそう感じないのはそれがあまりにも非日常すぎた現実だったからだろうか。だからこそ手のつけようがないほどのダメージだったのだと思えてしょうがない。

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