映画観るのも久しぶりならばPostするのも久しぶり。お待ちかね『カポーティ』が公開されたのでさっそく鑑賞。『ティファニーで朝食を』などの原作でお馴染みのトルーマン・カポーティが犯罪ノンフィクション『冷血(1966)』を書き上げるまでを映画化したもの。ポール・トーマス・アンダーソン作品やコーエン兄弟作品でパンチの効いた役を演じることが多かったフィリップ・シーモア・ホフマンが稀代の天才作家を怪演。
カポーティ独特のジェスチャーやクセを徹底的に研究し、これまた特徴的な高めのトーンの声色を全編貫き通しカポーティ像を完璧に再現し、また創作への情熱や執着心、苦悩を見事に演じて主要映画賞の主演男優賞を総なめにしたのは記憶に新しいところ。
若くして地位も名誉も得た人気作家カポーティが何気なく目をとめた田舎町の陰惨な殺人事件の記事、そこから新境地(ノンフィクション)を切り開きたい一心で、その事件を追いかけついに犯人2人組とも接触。そのうちのひとり、ペリー・スミスとの出会いで創作意欲をかきたてられ、傑作間違い無しの壮大なノンフィクション・ノベルの構想を練り上げていく一方で、彼の中に自分を見出していき、どんどんのめりこんでいくカポーティ。幾度にもわたるインタビューや接見でカポーティに心を開いたかに見えたペリーだったが、事件の真相については堅く口を閉ざしたまま・・・。
やがて下りる死刑判決。度重なる執行延期に執筆停滞を余儀なくされ、もどかしさと焦りがカポーティを襲う。
はたして事件の真相は?6年間事件を追い続けたカポーティの稀有なる体験の結末は。
ラストシーンではその後一冊も完成させることが出来なかったという、『冷血』後のカポーティの深い闇が観客にも垣間見えることになる。
この作品はなんといってもカポーティ=ホフマンの見事なカポーティの世界の体現につきます。怖いもの知らずの天才作家がその奥深くに封印していたと思われる闇をさらけ出し、その身を削って『冷血』に注ぎ、燃えつきるさまが淡々と演じられていきます。
ホフマンの確かな演技力と、その風貌に支えられたベストキャスティングでした。
もちろん物語がしっかりしていたのと脇を固めていたキャストも素晴らしく、特にカポーティの幼馴染にして親友・ネル(ハーパー・リー)の存在はとかく(その思考や言動が)倒錯的になりがちなカポーティを「まともな人」目線でさらりと修正、重く複雑になりがちな物語をうまく誘導し、良いバランサーの役割となっていました。
そんなわけですどちらかというと芸術性、文学性が高い作品にもかかわらずかなり観やすい作品となっていたのでした。