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映画『バベル』人間の愚かさや皮肉な運命

WalkersskによるPixabayからの画像

『アモーレス・ペロス』『21グラム』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品。第79回アカデミー賞で日本人女優菊池凛子が助演女優賞にノミネートされ話題に。
物語はモロッコ、メキシコ、アメリカ、日本を舞台に、ボタンの掛け違いのような事件が別々に起こり、それぞれがやがて1本線で繋がっていき、やがてあるところでは物悲しく皮肉な結末へ、あるところでは平凡な日常の幸せへと収束していく。
ある不幸な事件をきっかけに幼い子どもをベビーシッターに預けてモロッコに癒しを求めて旅するアメリカ人夫婦。そのモロッコでは銃を手に入れた山羊飼いの少年がほんの悪戯心をおこし、いっぽうベビーシッターはメキシコで息子の結婚式へ預かった子どもを手違いで連れていくことを余儀なくされ、東京に住む聴覚に障害を持った女子高生のチエコは、満たされない日々に苛立ち自暴自棄な日々を送り、やがて異なる3カ国で起きた事件がやがてチエコの父のもとへとたどり着く。

まず興味深かったのは作品中の各国の文化(慣習)の違い。
モロッコでのアメリカ人(あるいは欧米からと思われる旅行者たち)の少し横暴にもみえる態度、各国間の事情と民間人の温度差。
モロッコでの官の民に対するの扱いが酷であったり、またメキシコでは陽気かつ大雑把でなにもかもがワイルド。
若干の皮肉や風刺がこめられていたのか、人がいらだったときや切羽詰ったときに垣間見せる本性のようなところを見た気がする。

タイトルのバベルは少しでも神に近づこうと、実現不可能な天に届く塔を建設しようとした人間が神の怒りをかい、全世界へ散らされ、言語をバラバラにされたという『バベルの塔』の逸話から。世界のあちこちで争いが絶えず、また「個」が尊重されるあまりに隣人や親子でもコミニュケーションが難しい現代社会と重ね合わせている。

作品中ではそんな独りよがりの思い込み、思いやりに欠けたすれ違い、そしてほんの少しの運の無さが引き起こす残酷な結末は天罰さながらではあるけれど、まだそれで終わりではなくて。
そこから生まれる新たな希望と、つむぎだされるであろう次の物語の兆しに救われる。
過去作品でも人間の愚かさや皮肉な運命を描き続けているイリャニトゥ監督の一つの集大成かもしれない。

解説

「アモーレス・ペロス」「21グラム」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作。モロッコ、メキシコ、東京を舞台に起こるそれぞれの悲劇から、ひとつの真実に辿り着くまでが壮大なスケールで描かれる。出演はブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナルに加え、日本からは役所広司と菊地凛子が参加。菊地とアドリアナ・バラッサが第79回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた。
2006年製作/142分/PG12/アメリカ
原題:Babel
配給:ギャガ・コミュニケーションズ

バベル : 作品情報 – 映画.com
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