三谷幸喜脚本の傑作舞台劇『笑の大学』の映画化。こちらも三谷幸喜脚本、監督は「古畑任三郎」シリーズも手がけたこともあるという星護。
物語は日本が戦争へと突き進んでいた昭和15年。 国民の娯楽である演劇は規制され、台本も上演前に検閲を受けていた時代、国の非常時に娯楽など!と作品を片っ端から規制?講演中止をせんとする検閲官と笑いこそ娯楽とまっこうから検閲官に挑む大衆演劇劇団の座付き作家の検閲の一部始終。
オリジナル版は検閲官向坂を西村雅彦、座付作家椿を近藤芳正が演じたのがあまりにも有名。それより遡り舞台初演前の94年NHK-FMのラジオドラマがあって向坂を三宅裕司、椿を坂東八十助(現・三津五郎)が演じたそう。
ほぼ密室、主なキャストは2名、ほとんどが会話といかにも舞台向けな設定。
さて「どう映画になったのやら」と蓋を開けてみると検閲官向坂・役所広司の独壇場。最初のいかにも融通の利かなそうな頑なな表情からだんだん喜劇の魅力に取り付かれて豹変していく様子がお見事。その向坂を変えていったはずの座付作家椿・稲垣吾郎が霞む霞む。物語的には座付作家椿の挑戦がメインだと思うのだけど検閲官向坂の存在感が凄すぎて。さすがに最後のほうの泥臭い展開は勿体なかった。もうちょっと粋でクールにまとめてくれたらよかったのに。
ちょっと気になったのは命をすり減らすかのように無謀な「直し」に挑む椿のはずが、ずーっとお綺麗なままだったこと。
そりゃ国民的アイドルSMAPの稲垣メンバーともなればそうそうやつれたり汚れたりはできないのかもしれないけれど、あの時代の座付き作家にしては髪の毛セットされすぎ、いくらよろよろして「徹夜です」と言ってみたところで徹夜っぽさもあんまり。。。
でもまあ、そのへんはファンタジーとして片づけてしまえばなかなか楽しめると思います。残念ながら「映画ならでは」といった部分は回想シーンや緩急つけた役者の動きをカメラが助ける、といった具合程度にしか見受けられなかったけれど、この名作戯曲を広く公開できて沢山の人が観ることが出来たというところに意味はあったかもしれない。
昭和初期のレトロモダンな美術も楽しい。音楽はお馴染みの本間勇輔氏。カメオ出演も豪華でエンドクレジットでちょっと驚くキャストも。
作品データ
タイトル | 笑の大学 |
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監督 | 星護 |
キャスト | 役所広司、稲垣吾郎 |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2004 |
ジャンル | 社会派ドラマ,コメディ |
備考 |