子供が生まれた(産後編)

昨年の10月に子どもが生まれた。妊娠出産のその後がこれまた想像だにしない大変さだった。

休めるのはほんの少し

産後、というか術後はのんびりと出産の感慨にふけるということもなく、麻酔が切れて痛かったり高熱が出たかと思いきや寒気で震えが止まらなかったり、でもなんとか授乳したりしてわけがわからないうちに一晩が経ち、午後には立って歩くことができるようになった。若干点滴をしながらも赤ちゃんのお世話がいよいよ始まる。
イコール昼も夜もなく授乳を与えるということ、さすがにまだまだお腹が痛むが経過は順調ということで、とにかくやるしかない〜という気持ちでがんばることに。

試行錯誤

通常、母乳育児しようとする場合は産前にお乳の出が良くなるようにマッサージなどするように指導されるのだが、逆子だったため陣痛を促す危険のあるマッサージはご法度。まったくといっていいほどケアすることはできなかった。そういうこともあり、すぐに母乳がスイスイ出るわけもなく。助産師さんの指導のもと3時間ごとに与えるノルマはこなしていたつもりだったが、がんばってもちゃんと飲ませることができていなかったようで赤ちゃんの体重や血糖値が標準値を下回っていってしまった。
前述の通り出遅れてしまっていはいたものの「今から頑張ればちゃんと追いつけるから大丈夫!」と助産師さんに励まされ、3時間ごとに母乳に加え血糖を上げるための糖水も飲ませることになった。しかしその後の測定で血糖値は安定したものの体重の好転はせず。
助産師さんにマッサージをしてもらいつつ、また指導を受ける。母乳の出は悪いわけでもないが、うまく飲ませることができていない(赤ちゃんもまだうまく飲めるわけではない)のかもということで、確実に飲ませるために直飲ませ以外に空いた時間に手で搾ったもの(搾乳)を飲ませる、それも足らないようであれば糖水も与える、ということになった。

休むヒマなし

1回の授乳で「直飲ませ+搾乳+温めた糖水」を与えるため30分以上かかった。授乳が3時間おきで、その合い間合い間で搾乳。搾乳は直飲ませのときに出ないのも困るので授乳時間の直前は避けねばならない。常に追いかけられている気分。
搾乳量は都度チェックし授乳量を管理。さらに授乳から3時間空かなくても泣いたら即授乳。昼夜を問わず授乳か搾乳している状態になった。
搾乳はそう楽なものではなく、最初は30分かけて数ccがやっと。そうこうしているうちに次の授乳時間がきてしまい焦る。そんな思いをして搾って与えても派手に吐き戻されることも少なくなく、ものすごい徒労感にかられた。
糖水は都度ナースステーションで出してもらって授乳サロンで温めてから与えないといけないため、授乳サロンに頻繁に通った。授乳サロンでは同じく新米ママとなった人たちが自信に満ち幸せそうに張り切って授乳しているように見えた。クタクタになってお乳ではなく糖水を与えている自分が惨めで、日に日に痩せてしまう我が子には申し訳なくてやるせない気分になった。
唯一休まったのは1日1回程度あったお乳のマッサージの時間。横になっておしゃべりしつつ、ついでに搾乳もしてもらえたので少し休むこともでき、リフレッシュできた。

軽く壊れる

毎朝の赤ちゃんチェックは楽しみでもあり怖くもあった。昨日あれだけやったのだから…と期待を持つもなかなか数値は好転はせず途方に暮れる。
こうなる前に母乳だけでなくミルクも与えるという選択肢もあったはずだが、実際そこまで自分では考えが及ばなかった。(数値が良くない結果が出た当初、病院からミルクも考えてますか?と訊かれたと思うが、その時はなんとかなると信じていたので出来るだけ母乳でいきたい、と答えた、その後は最後まで積極的に勧められることはなかった。)
数値が良くなかったとしてもそこはNICUもある大病院、何かあっても(というか何かある前に)きっと対応してくれる、という気持ちでなんとか過ごした。
しかし退院の日が近づくにつれ、不安が募っていった。まだまだうまく飲ませられない、家でも糖水あげないとだとするとどうなるんだろう…。
退院の前日の明け方、その日の担当助産師さんに授乳の指導や搾乳お手伝いをしてもらうつもりが緊急対応で来てもらえず。心身疲れていたのもあり他の人に助けを求める気にもなれず、さすがに途方にくれて気持ちがプツリと切れた。涙が止まらなくなる。
赤ちゃんは眠りっぱなしで、3時間ごとの授乳以外は飲みたがることもなくなっていた。直接の授乳の軌道が乗る前にあかちゃんの体力が落ちてしまい、体力をなるべく消費しないように冬眠状態になったのだという。

方針転換

退院の前日、病院でお産ラッシュが押し寄せてベッドが足らなくなってしまったので、唯一空いている家族も泊まれるという特大個室に差額なしでいいので移って欲しいといわれる。特別措置なのであと一晩で退院するという方も同室、年齢も近く同じく帝王切開でのお産の方ということでお話しやすいかも、あなたはすごく頑張ってるからリフレッシュしてもらえたら!ということだった。
見晴らしもよくゆったりできる部屋に移動、同室の方は気さくな方で屈託なくおしゃべりすることができた、その方も彼女なりに様々なトラブルがあったようで同じく他の人が羨ましく感じていたという、自分だけじゃなかったんだと孤独感は薄れ、まるで入院という名の合宿だよねと笑った。
そのうち助産師さんが来て今日1日どうするのかを話し合う。搾乳はけっこう量がでるようになっているので搾乳器を使う、お乳を吸う練習にもなる哺乳瓶を使い与えながら赤ちゃんはトレーニング、糖水は吐き戻されてしまうことが多いならやめましょうとなった。気分がリフレッシュしたところでやることが明確になってちょっとやる気も出てきた。
明日の朝の測定数値を見てまだ良くないようならミルクを足すことにしましょう!と提案される。軌道に乗ったら母乳だけに戻せると聞き、それならばという気になる。
その後、沐浴練習(上手!バイトに来て!と言われる 笑)、前日健診(異常なし!)と順調に済み、翌日の退院に備える。

退院!

翌日、なんと出産時からの毎日の計測で最低の数値が出てしまう。やはりミルクを足すことが決定、確実に飲ませることができると逆にホッとする。ミルクの量と飲ませ方の指導を受け、退院後の経過を見てもらうため2日後に赤ちゃんの計測と指導、1週間後に母乳外来の予約を入れる。
退院後は指導通りにミルクも与えた成果か順調に体重も増え、1週間後には基準値に追いつけた、特に何もないようなら1ヶ月健診まで来なくても大丈夫ですよと太鼓判、よかった。
その後は順調に授乳ができるようになり、ほぼ完全母乳に。発育も順調に標準値で推移、今では授乳したい時にほいほいできるようにもなった。
あの時は大変だったなぁと思いつつ、これがいずれなくなるかと思うとちょっと寂しい。